どんな形しているの?

海のクマムシは現在約200種ほど知られており、陸産・淡水産種とは比べ物にならないほど、いろいろな形をしています。しかし、体長が0.1ミリ、大きくても0.3ミリのため、顕微鏡での高倍率の観察を行わなければなりません。しかしそうすると、焦点深度が浅くなり、多くの場合、写真写りは悪くなります(体が透明で深度合成もだいたいうまくいきません)。そのためクマムシの形の美しさを見ていただくには、実際に顕微鏡を覗いていただかなくてはなりません。これは現実的ではないので、申し訳ないですが、ここではクマムシのスケッチで我慢してください。本物はもっと美しいです。

ひらひらしたクマムシ

まずは背側と腹側の間に薄い皮のあるクマムシです。図を用意したのはウミクマムシ科ハナクマムシ亜科ハナクマムシ属Florarctus(図1, 2)ですが、他にも同亜科Ligiarctus(属)、Wingstrandarctus(属)や、相同ではないと考えられますが、同科Euclavartinae(亜科)Parmursa(属)、同科Styraconyxinae(亜科)Raiarctus(属)Rhomboarctus(属)、同科Tanarctinae(亜科)Actinarctus(属)もこの薄い皮を持っています。チカクマムシ科でも似たようなものを持っている種がいます。これをクマムシがどのように使っているのかは不明です。
ハナクマムシ属は世界中の、砂浜から水深数百メートルの粗めの砂から見つかる、よく見かける海のクマムシのグループの一つです。体長も比較的大きく、見つけやすいのですが、その多くがそっくりで、薄い皮の根元の少し厚くなっている部分や、口の周りの平たい感覚器官を観察しないと種を同定できません。
海のクマムシFlorarctus wunai
図1. Florarctus wunai
(c) Shinta Fujimoto
Illustration and micrograph from: Fujimoto, S. 2015. Halechiniscidae (Heterotardigrada, Arthrotardigrada) of Oura Bay, Okinawajima, Ryukyu Islands, with descriptions of three new species. ZooKeys. 483: 149-166.

普通の?海のクマムシ

次に紹介するのはウミクマムシ科ウミクマムシ属のクマムシです(図2)。
海のクマムシHalechiniscus churakaagii
図2. Halechiniscus churakaagiiのスケッチ
(c) Shinta Fujimoto
Illustration from: Fujimoto, S. 2015. Halechiniscidae (Heterotardigrada, Arthrotardigrada) of Oura Bay, Okinawajima, Ryukyu Islands, with descriptions of three new species. ZooKeys. 483: 149-166.

不思議なものを生やすクマムシ

カザリクマムシ科Tanarctusは四対目の肢の感覚器官が長い毛になっています(図3)。この毛は、ハナクマムシで見られる薄い皮同様、何に使われているかはわかっていません。しかし、種によって形が大きく異なることはわかっています。ただの長い毛のものから、毛にさらに短い毛が生えたもの、樹状に分岐するもの、分岐した先が葉っぱのようになったもの、風船のようになったものと様々である。その興味深い形は、第8回国際クマムシシンポジウムのロゴに採用されたこともある(ロゴへのリンク(Symposia>VIII>Logo))。
海のクマムシtanarctus diplocerus
図3. Tanarctus diplocerusのスケッチ
(c) Cambridge University Press. All rights reserved.
Illustration from: A new marine tardigrade, Tanarctus diplocerus (Arthrotardigrada: Halechiniscidae) from Japan. Shinta Fujimoto, Katsumi Miyazaki and Atsushi C. Suzuki. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, 93(4): 955-961.

かたそうなクマムシ

チカクマムシ科(図4)は、体節にあわせて板状のクチクラ(皮)をもち、フシフシしているところから海産クマムシ学の大家・故Renaud-Mornant氏などに、クマムシの中で一番ご先祖様に近い形をしているのではないかと考えていたが(e.g. Renaud-Mornant 1982)、最近DNAに基づく系統解析によって、これを否定する仮説が提唱された(Fujimoto et al. 2017:詳しい解説はこちら)。
ちなみに下記のリンク先で同科Parastygarctusのぬいぐるみが販売されています(監修者にお金は入りません)。↓
ぬいぐるみ専門店Love Journey楽天店
海のクマムシStygarctus ayatori
図4. Stygarctus ayatoriのスケッチ
(c) Magnolia Press. All rights reserved. Illustration from: Fujimoto, S. 2014. A new Stygarctus (Arthrotardigrada: Stygarctidae) from Japan, with entangled seminal receptacle ducts. Zootaxa. 3784 (2): 187-195.