そもそもクマムシって何?

他の動物との関係

基本的な体の仕組みに基づいて動物を分けると、30いくつかのグループ(門*)に分けられるのですが、クマムシとはこの中の一つ、緩歩動物門Tardigrada全体を指す慣用名です。その特徴となる体の仕組みは、簡単に言うと、口から排泄孔に抜ける消化器系があり、体に目立った節(**)がなく、4対の節のない肢を持っていること。このクマムシという動物は、節足動物門Arthropoda(いわゆるムシ・エビ・カニ・クモ・ムカデなど)と有爪動物門Onychophora(カギムシ)と近縁とされており、三者をあわせて汎節足動物Panarthropodaと呼ばれています。
(*) 我々ヒトは、脊索(人で言う背骨)を持つことを特徴とする脊索動物門Chordataに属しています。
(**) 腹側に神経節があり…難しい話は止しましょう。

クマムシってどんなやつ?

クマムシは陸産、淡水産、海産種をあわせると1200種近くが知られている、体長一ミリ以下の動物です。耐性とその程度に違いはあるものの、陸産、淡水産と一部の海産種で極限環境耐性が知られています。この能力を試すためか、クマムシは宇宙に連れて行かれ、宇宙空間に曝されたこともあります。
クマムシは大きく3つのグループ(綱)、真クマムシ綱、異クマムシ綱、中クマムシ綱に分けられています。真クマムシ綱(右上段の写真)は最大の種数を誇り、ほぼ全て陸産で、その一部が二次的に淡水と海洋環境に進出している。短いソーセージに短い肢を生やしたような形をしています。種の同定には、爪と摂餌器官と卵の形が主に用いられます。つるんとしていて、どれも同じように見え、多くの場合、量的な形質に頼ることになり、同定するのはしんどいです。異クマムシ綱(右中段の写真)は、ほとんどの海産種を含むグループで、その一部が陸上進出したことがわかっています。このグループの海産クマムシ類には、現生クマムシ類の中でもっとも祖先的な形を多く残していると考えられているものをはじめ、陸産種・淡水産種では見られない、多様な形のものが知られています(詳しくはどんな形しているの?)。陸産種・淡水産種も、真クマムシ綱の種と異なり、そのほとんどの背側が装甲のようになっています。真クマムシ綱と異クマムシ綱は、外に突出した感覚器官の有無(前者に無く*、後者に有る)と肢先の爪の並び方(後者では基本的に4本の独立した爪が横一列に並ぶ)で簡単に区別できます。中クマムシ綱はこの二つの綱の中間的な形をしています。このグループには一種オンセンクマムシThermozodium esakiiのみが属しています。このクマムシは日本の雲仙温泉の古湯地区(温泉街のあるところ、右下段の写真)で一度見つかったきりの種です。続報がもう70年以上ないので、UMAのような扱いを受けています。
(*) ハナレヅメ目には口の周辺に乳頭状の感覚器官があるが、異クマムシ綱の感覚器官との相同性は確認されていません。